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ロングの大会はトータルのタイムで考えて 小休止を取る勇気を持てば完走率アップ!

レースは最善を尽くすことがモットー

前回、アクシデントが起きた2023年の宮古島大会で、あきらめずに走りきり、完走できたと書きました。アクシデントにあった直後は自分自身も少しフラフラしていましたし、バイクも壊れていたので「リタイアするしかないのかな」と少し弱気になりました。しかし、オフィシャルの方の手を借りてバイクが直り、自分自身も続けられそうな状態まで回復したので、周囲の方々の迷惑になることもなさそうだと判断してレースを続行することにしました。

リタイアは、どうしようもない場合を除いてしないと決めています。それは選手時代の経験からたどり着いた気持ちです。話は19歳の頃に遡ります。当時はアルバイト生活から抜け出したくて、毎回上位を狙ってレースに挑んでいました。ポルトガルで行われた2004年の世界選手権に出場した際は、調整もうまくいき気持ちが高まっていました。しかし、バイクで走っていたときに前にいた選手が落車してしまいました。ジャンプをして衝突は回避できたのですが、そのときにバイクが壊れてしまい修理できないと判断して、すぐに天を仰いでリタイアをしました。上位に入りたいと意気込んでいたので、直後に物に当たるような行為をしてしまい、そんなことをした自分に対する悔しさも沸き上がってきました。ここまでいい準備ができていたのに、どうしてすぐに諦めてしまったのか、まだできることがあったのではないかと、その後いろいろと反省をしました。
そこからは結果は結果として捉え、常に「最善を尽くす」という気持ちを持つことができるようになり、その時の経験が自分を精神的に強くしてくれたと思っています。2008年の北京オリンピックでは補欠になり、出場は叶いませんでした。以前の自分であれば、そこで諦めていたかもしれません。でもオリンピックに出場したいのであれば、競技を続けていれば再度挑戦できると気持ちを切り替えることができました。

ロングでは一度立ち止まるのも戦略のひとつ

簡単には諦めないという気持ちは、現在のコーチングにも生きています。特に若い選手には、「最善を尽くす」気持ちとレースや練習で「目的と目標」を明確に持つようにすることを伝えるようにしています。自分自身の経験から、諦めずに続けていたほうが後悔せずにやりきれると思っているからです。
もちろん、体調が悪い時などはリタイアをする勇気を持つことも必要です。実際に2023年の大会の時もまたふらつくようなことがあれば、さらに怪我をしていたかもしれません。そういうときは自分の体と相談しながら、判断をしてください。
ロングの初心者の方は、レースでは経験したことのない未知なる経験をすることが多いと思います。体が辛くて続けるのが厳しいという時は、思い切って日陰で10~15分休んでみるのもひとつの方法です。一度立ち止まって冷静に自分の状態を眺めてみると、暑さで体がばてている、補給が足りていないといった問題点に気がつけるものです。ロングのレースでは、トータルのタイムを逆算して完走を考えればいいので、休むのも「あり」だと思うようにすれば大崩れしにくくなります。
実は先日、故郷のマラソン大会に招待されてフルマラソンを走ってきたのですが10キロほどのところで足を捻ってしまいました。そのときは15~20分ほど立ち止まって、様子を見て再度走り出しました。本当は目標時間内に完走したかったのですが、足の様子を見つつ、走りながら下方修正することに。最後は歩くのも辛かったのですが、何とか完走することができました。勝つことが目的ではありませんから、目標を柔軟に変えながら、諦めることなく走りきれてよかったです。  

宮古島大会は距離だけではなく、暑さを攻略することも完走するための大きなポイントになります。特に寒い地域から宮古島に来ている方は、数日の滞在では暑さに対応できていないということも十分に理解しておいてください。水だけでは脱水症状は回復しにくいので、スポーツドリンクなどの水分補給に適した飲料を選ぶなどしてください。そのような基本的な知識はインターネットでも簡単に検索できるので、いろいろと調べて自分に合うドリンクを見つけておくようにしましょう。

時間のやり繰りをしてレースに挑んでいる姿勢に感動

宮古島大会などロングの大会に参加されているのは、距離に関わらずトライアスロン経験のある方でしょう。エントリーをした瞬間から過酷なレースを乗り切るために、今まで以上にトレーニングをしなければならないと覚悟が必要になるはずです。
コーチを始めて3年目になりますが、一日8時間を練習に費やせる選手は恵まれているなと思います。趣味でトライアスロンに挑戦している皆さんは仕事をして、限りある時間の中でどのような練習をするかを考えたり、中にはコーチをつけたりとそれぞれで努力をされている方がほとんどです。
参加者の皆さんは、ちょっとやそっとでは宮古島で完走できないことをよく知っていて、仕事で疲れていても30分だけでも泳いだり、走ったりと毎日練習をしているという話を聞きます。本当にトライアスロンに対する愛情がすごいと思いますし、そうやって未知なる挑戦をされている方々を尊敬しています。
ゴール後に、皆さんと話をしていると一人一人の方にドラマがあり、それを聞くのがとても楽しいですよね。レースで完走するのは大変ですが、決して一人で走っているのではないと感じられるのが宮古島大会のいいところだと思います。ぜひ、お互いをリスペクトしながら大会の一体感を味わってほしいと思います。
大会前々日の4月18日には、参加者や家族、応援に来た方も一緒に楽しめるウエルカムパーティーが開催されます。今年からゴールドパートナーとして大会をスポンサードされる飯田グループが運営する「宮古島来間リゾート シーウッドホテル」で開催されるもので、私も参加しますので、そこでも皆さんとお話しできたらと思います。
大会の前後は、ぜひ宮古島の旅路も楽しんでください。次回はお勧めのショップやレストラン、カフェなどをご紹介します。

細田 雄一

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プロフィール
  • 2011年、2021年 日本トライアスロン選手権優勝
  • 2010年、2014年 アジア競技大会 トライアスロン競技優勝
  • 2012年 ロンドンオリンピック出場
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